オーストラリア当局、仮想通貨ロマンス詐欺に関与した企業95社を閉鎖
オーストラリア当局が世界的ロマンス詐欺に関与した企業95社を閉鎖
ASIC (オーストラリア証券投資委員会)は、仮想通貨を利用した詐欺行為「ピッグ・ブッチャリング:豚の屠殺詐欺」に関与したとされる企業95社を一斉に閉鎖した。
これは同国史上でも例を見ない規模の摘発であり、2025年4月7日に連邦裁判所がASICの申立てを承認したことで正式に清算手続きが開始された。仮想通貨を悪用した詐欺が国際的に拡大する中、オーストラリア当局が消費者保護の観点から本格的な取り締まりに乗り出した形だ。
閉鎖された企業の多くは、ASICに対して虚偽の情報を提出し、実体が確認できないまま登録・運営を続けていた。公式発表では具体的な構造までは言及されていないが、こうした企業が国際的な詐欺ネットワークの一部として機能していた可能性がある。こうした企業が、仮想通貨を利用した国際的なロマンス詐欺の温床となっていたとみられ、ASICの調査でその全容が明るみに出た。特にアジア太平洋地域における詐欺拠点として、これらの企業が機能していた可能性も示唆されている。
巧妙化する詐欺手口と国際的な被害拡大
豚の屠殺詐欺と呼ばれる詐欺の手口では、SNSやマッチングアプリを通じて被害者と信頼関係を築き、最終的に偽の外国為替、デジタル資産、商品取引などへの投資に誘導する。
詐欺師らは、正規企業のような装いで信頼を得たうえで、実体のない投資商品への資金提供を引き出す。近年ではAI(人工知能)チャットボットや偽アプリなどを駆使した詐欺が急増しており、被害者は日本、アメリカ、カナダ、イギリスなど世界各国に広がっている。長期的なやりとりによって感情的なつながりを作り出し、最終的に金銭を搾取するこの手法は、極めて悪質かつ摘発が難しいとされる。
ASICのサラ・コート(Sarah Court)副委員長は、こうした詐欺(豚の屠殺詐欺)を“ヒドラ(hydras)(※1)”になぞらえ、「1つの詐欺を排除してもさらに2つが現れる」と警鐘を鳴らし、常に進化する脅威との闘いの難しさを強調。同副委員長は、企業閉鎖の意義について次のようにも コメント している。
ヘラクレスによって退治された九頭の海蛇“ヒドラ”からきており、2019年に出現したアンドロイド用バンキング型トロイの木馬の一種。主にユーザーを騙してオンラインバンキングアプリをターゲットに、で危険な権限を有効にすることで、財務資格情報を盗む手口の事。
ASIC は、これらの企業の多くは、本物のサービスを提供すると称して、表面上の信頼性を与える目的で設立されたと考えています。この措置により、これらの企業は閉鎖され、不正行為の可能性がある企業を含む、適切な管理や統制のない企業から消費者が保護されます。
詐欺撲滅へ向けた制度改革と啓発活動
オーストラリア従政局は、仮想通貨詐欺に対する対策として毎週約130件の詐欺関連ウェブサイトを削除しており、ASICも企業登記制度の改革に着手。今後は仮想通貨関連企業に対する登録・監視体制の強化を進め、詐欺防止機能の制度的な向上を目指す。
同時に、消費者への啓発活動も強化されており、ASICは「感情的な関係性を使って資金を要求する相手には注意が必要」と警告。詐欺の被害を未然に防ぐため、一般利用者に対してもリテラシー向上を促している。なお、今回の摘発は、インド当局が日本に関連した70万ドル(約1億円)相当の仮想通貨詐欺に関与した5人を逮捕した直後に行われており、国際的な詐欺ネットワークへの対応が各国の急務となっている。
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